ビアレッティの主力であるアルミ製のモカエキスプレス、ブリッカなどはIHでは使うことができません。これは、IHの加熱原理とアルミの素材特性が合わないためです。
しかし、ご安心ください。IH対応のビアレッティモデル、「モカインダクション」や「ヴィーナス」などが存在しますので、それらのモデルであればIHで使用が可能です。
また、たとえIH非対応のモデルであっても、「ビアレッティ インダクションプレート」のようなIHアダプター・IHプレートを使えばIHコンロで美味しい直火式コーヒーを楽しむことが可能です。
インダクションプレートの使い方はシンプルで、IHコンロの上にプレートを置き、その上にビアレッティを乗せて加熱するだけです。
この記事ではビアレッティがIHで使えない理由、「ビアレッティ インダクションプレート」というアイテムについて、IH対応のビアレッティモデル、「モカインダクション」や「ヴィーナス」について詳しく解説しています。
- アルミ製ビアレッティがIHで使えない理由と、IHの加熱原理
- IH対応のビアレッティモデル(モカインダクション、ヴィーナスなど)の存在と特徴
- IH非対応モデルをIHで使うための「インダクションプレート」の使い方と注意点
- IHで使う際のよくある疑問の解決策
ビアレッティ(マキネッタ)がIHで使えない理由
ここでは、ビアレッティがIHで使えないとされる主な理由を具体的にご説明します。
IHとアルミ製素材の関係性
ビアレッティの代表的なマキネッタ、例えばモカエキスプレスやブリッカなどは、伝統的にアルミニウム製が主流です。しかし、IH(電磁調理器)は、内部のコイルに電流を流すことで磁力線を発生させ、この磁力線が調理器具の底を通る際に「うず電流」を発生させ、金属自体を発熱させる仕組みを持っています。ここで重要なのは、磁力線が「磁性体」である金属(鉄やステンレスなど)に強く反応するという点です。
残念ながら、アルミニウムは電気を通す金属ではありますが、「非磁性体」であるため、IHの磁力線にほとんど反応せず、発熱しないのです。これが、一般的なアルミ製ビアレッティがIHコンロで使えない一番の理由です。
底面サイズ12cm以下とIHの反応について
もう一つの大きな理由として、IHヒーターの「最低検知サイズ」が挙げられます。日本の多くのIHヒーターには、調理器具の底面の直径が約12cm以下の場合、安全機能が働いて加熱を検知しないという仕様があるのです。
ビアレッティのマキネッタは、1カップ用や2カップ用といった小さいサイズが多く、これらのモデルは底面直径が12cmを下回ることがほとんどです。たとえステンレス製のIH対応モデルであっても、12cmを下回るものであればIHヒーターが器具を認識せず、加熱できない可能性があるため、注意が必要になります。
IH対応モデルと海外規格
IH対応のビアレッティモデル「モカインダクション」や「ヴィーナス」も存在します。これらのモデルは、底面にステンレス素材を使用し、IHでも加熱できるよう設計されています。しかし、ここで知っておきたいのは、IH対応と明記されていても、日本のIHコンロは海外の規格と異なる場合がある点です。そのため、ご自宅のIHヒーターの機種によっては、たとえIH対応モデルであっても、うまく使えない可能性がゼロではありません。購入前にIHヒーターの取扱説明書を確認することが大切です。
IHでビアレッティを使う解決策
もしあなたのビアレッティがIH非対応のアルミ製だったとしても、諦めるのはまだ早いです。いくつか方法を試すことで、IHコンロでも美味しいコーヒーを淹れることが可能です。
IH対応モデル「モカインダクション」や「ヴィーナス」を選ぶ
これからビアレッティの購入を検討している、あるいは既存のものを買い替えたいと考えているのであれば、「IH対応」と明記されたモデルを選ぶのが最もシンプルで確実な方法です。
例えば、ビアレッティの「モカインダクション」や「ヴィーナス」といったモデルがIH対応として販売されています。これらのモデルは、底面がステンレス製になっているため、IHコンロで直接加熱することができます。しかし、前述の通り、日本のIHは海外と規格が異なる場合があります。そのため、たとえIH対応モデルであっても、ご自宅のIHヒーターの底面サイズ対応範囲や、IHヒーター自体の仕様を事前に確認することが大切になります。
ビアレッティ インダクションプレートを使う
現在お持ちのIH非対応ビアレッティをどうしてもIHで使いたい場合に非常に有効なのが、「IHヒーティングプレート」または「インダクションプレート」と呼ばれるアイテムを使用することです。これは、IHコンロで発熱する素材(鉄やステンレス)でできたプレートで、その上にIH非対応の調理器具を置いて間接的に加熱する仕組みを持っています。
プレート自体がIHの磁力線に反応して発熱し、その熱がビアレッティに伝わることでコーヒーを抽出できるのです。ビアレッティ純正のアダプターも販売されていますし、他メーカーからも様々な種類のプレートが出ています。プレートの直径とビアレッティの底面が合うサイズを選び、安定性も考慮して選びましょう。
カセットコンロなど他の熱源を使う
どうしてもIHで使えない、あるいはIHでの使用に不安を感じる場合は、カセットコンロや電気コンロといった他の熱源を併用することも現実的な解決策です。これは、屋外での使用を考えている場合や、災害時の備えとしても有効な方法となるでしょう。
IH対応ビアレッティ製品の特徴と選び方
IH対応のビアレッティに買い替えたいと考えている方のために、人気モデルの特徴と選び方のポイントを詳しくご紹介します。
IH対応モデル 3種類のラインナップと違い
ビアレッティのIH対応モデルには、主に以下のようなラインナップがあります。それぞれに特徴があり、あなたの好みや使い方に合わせて選ぶことができます。
- モカインダクション: ビアレッティの象徴である「モカエキスプレス」のクラシックな八角形デザインを保ちつつ、下部(ボイラー)がステンレス製(グラッド鋼)になったIH対応モデルです。サイズ展開も豊富で、直火とIHの両方で使える汎用性が魅力です。伝統的なデザインをIHキッチンでも楽しみたい方に最適と言えるでしょう。
- ヴィーナス: ボディ全体が美しいステンレス製で、丸みを帯びたモダンでスタイリッシュなデザインが特徴的です。IH対応はもちろんのこと、オールステンレス製であるため、お手入れもしやすく、長く清潔に愛用したい方におすすめできます。
- ブリッカインダクション: ビアレッティの中でも特に人気の高い、本格的な「クレマ」(エスプレッソの表面にできる泡)が楽しめる「ブリッカ」のIH対応版です。上部はアルミニウム、下部はステンレス(グラッド鋼)の構造です。より濃厚で、エスプレッソに近いコーヒーをIHで淹れたい方には、このモデルがぴったりでしょう。
サイズ・素材・味わいの違い
IH対応モデルを選ぶ際には、サイズ、素材、そしてそれらがコーヒーの味わいにどう影響するかを知っておくと良いでしょう。
- サイズ: 前述の通り、IHヒーターには最低検知サイズがあります。IH対応モデルは底面が大きめ(12cm以上)であることが多いため、IHで使うことを前提とするなら、少なくとも2カップ用以上を選ぶのが無難です。1〜2カップ用はIH対応とされていても、反応しないケースがあるため注意が必要です。
- 素材: IH対応モデルの多くはステンレス製、あるいは下部がステンレス(グラッド鋼)です。本来はアルミ製が多かったビアレッティですが、ステンレス製とアルミ製では熱伝導率が異なります。アルミニウムは熱伝導率が高く、素早く全体が温まるため、コーヒーの成分がスムーズに抽出され、まろやかで雑味の少ない味になると言われています。一方、ステンレスは熱伝導率がアルミより低いため、加熱に時間がかかり、じっくりと抽出される傾向があります。そのため、風味にわずかな違いを感じるかもしれません。
- 味わい: アルミ製とステンレス製でコーヒーの味に明確な差があると感じる人もいれば、ほとんど感じない人もいます。一般的には、アルミ製の方がより深みやコクを感じやすいという意見もありますが、これは個人の好みや使用するコーヒー豆の種類、挽き具合、そして抽出時の火加減にも大きく左右されます。
購入前に確認すべきポイント
IH対応ビアレッティを購入する前に、以下の点を必ず確認してください。
- ご自宅のIHヒーターの底面サイズ対応範囲: ご自宅のIHヒーターが何cm以上の底面直径を検知するのか、取扱説明書で確認しましょう。
- 「IH対応」であることの明記: 必ず製品パッケージや説明書に「IH対応」のマークがあるかを確認します。
- 返品・交換対応の有無: 万一、ご自宅のIHで使えなかった場合に備え、購入店舗の返品・交換規定を確認しておくと安心です。
ビアレッティ インダクションプレートの使い方と注意点
IH非対応のビアレッティをIHで使いたい場合に便利なヒーティングプレート(ビアレッティ インダクションプレート)ですが、その使い方と注意点をしっかり理解しておくことが、安全で美味しいコーヒーを淹れる鍵となります。
使い方の手順
ヒーティングプレートの使い方は非常にシンプルです。
- まず、IHコンロの加熱部にヒーティングプレートを置きます。
- 次に、コーヒー粉と水をセットしたマキネッタを、そのプレートの真上に安定させて乗せます。
- IHコンロの電源を入れ、火力を中火から弱火に設定して加熱を開始します。強すぎる火加減は、プレートやマキネッタの損傷、あるいはIHの安全機能が作動して加熱が停止する原因になることがあります。
- コーヒーがゆっくりと上部のサーバーに上がってきたら火を止め、抽出が完了するのを待ちます。
- 抽出が終わったら、コンロの電源を切り、プレートが完全に冷めるまで絶対に素手で触らないようにしてください。
安全に使うためのポイント
ヒーティングプレートはIHコンロで直接発熱するため、使用後は非常に高温になります。安全に使用するために、以下の点に注意しましょう。
- 使用後は絶対に素手で触らない: プレートは想像以上に高温になり、火傷の危険があります。完全に冷めるまで触らないか、ミトンなどを使って取り扱うようにしましょう。
- IHの安全機能に注意し、弱火〜中火で加熱: 一部のIHコンロには、空焚き防止や過熱防止などの安全機能が備わっています。プレートが高温になりすぎると、これらの機能が作動して加熱が停止する場合があります。これを避けるためにも、最初から強火で加熱せず、弱火から中火でじっくりと温度を上げていくのがコツです。
- プレートのサイズ選び: ヒーティングプレート自体がIHコンロに検知される必要があります。一般的に12cm以上の直径があれば問題ありませんが、ご自宅のIHコンロの最低検知サイズに合わせて、適切な大きさのプレートを選びましょう。
よくある失敗と対策
ヒーティングプレートを使う上で、いくつか起こりがちな失敗とその対策を覚えておくと良いでしょう。
- 火力が強すぎてIHが停止する: これは前述の安全機能が働くためです。対策として、必ず弱火から中火で加熱し、焦らずじっくり抽出することを心がけましょう。
- プレートが小さすぎてIHが反応しない: これもIHの最低検知サイズによるものです。お持ちのプレートのサイズが小さい場合、より大きな(12cm以上の)プレートを選ぶか、IH対応のマキネッタへの買い替えを検討するのが良いかもしれません。
- 加熱ムラや抽出不良: マキネッタがプレートの中心にまっすぐ置かれていないと、熱が均一に伝わらず、抽出にムラが生じることがあります。プレートの中央にマキネッタをしっかりと安定させて置くようにしましょう。
ビアレッティをIHで使う時のQ&A
IHでビアレッティを使う際に多くの方が抱く疑問や、よくあるトラブルとその解決策をQ&A形式でご紹介します。
Q. IH対応モデルでも使えないことがあるのはなぜ?
A. 前述の通り、これは主に日本のIHコンロの底面サイズや磁力の規格が海外と異なるためです。IH対応とされているモデルであっても、特に小さいカップ数のもの(例えば2カップ用など)は、ご自宅のIHが調理器具として認識しない場合があります。これは製品の故障ではなく、IHヒーター側の安全機能が働いているためです。購入前に、ご自宅のIHヒーターの取扱説明書で、最低検知サイズを確認することが非常に重要です。
Q. ヒーティングプレートを使うと味や抽出に影響は?
A. 基本的に、ヒーティングプレートを使っても直火で淹れるのと同様にコーヒーを抽出できます。しかし、プレートを介しての間接加熱になるため、直接加熱よりも熱伝導効率がやや落ち、抽出に時間がかかる傾向があります。この加熱スピードの遅さが、コーヒーの味に微妙な違いをもたらす可能性もありますが、多くの場合は許容範囲です。もし抽出が遅いと感じる場合は、火力を微調整してみましょう。プレートの素材や厚み、IHヒーターの性能によっても、抽出時間や味への影響は異なります。
Q. 小型モデルはIHで使えない?
A. その通りです。ビアレッティの特に小型のモデル(1〜2カップ用など)は、底面直径が12cmを下回るものが多く、IHヒーターが調理器具として認識しない場合がほとんどです。これは、IHの安全機能によるものです。ヒーティングプレートを使っても、IH自体がそのプレートを検知しない限りは使用できません。そのため、小型モデルをIHで使いたい場合は、最低検知サイズをクリアする大型のヒーティングプレートを選ぶか、IH対応のモデルを検討することをおすすめします。
まとめ:ビアレッティがIHで使えない→インダクションプレート活用orIH対応モデルの選択
- ビアレッティの多くのモデル、特にアルミ製かつ底面が小さいものは、そのままではIHで使うことができません。 なぜなら、IHの電磁誘導加熱の原理と、アルミニウムの非磁性体という特性が合わないためです。
- IHでビアレッティを使いたい場合は、大きく分けて2つの解決策があります。 ひとつは、IH対応を謳う「モカインダクション」や「ヴィーナス」といったモデルを選ぶこと。もうひとつは、現在お持ちのIH非対応ビアレッティをIHコンロで使えるようにする「IHヒーティングプレート(ビアレッティ インダクションプレート)」を利用することです。
- IH対応モデルを選ぶ際も、日本のIHコンロの底面サイズや磁力の規格によっては反応しない場合があるため、購入前にご自宅のIHの仕様を必ず確認しましょう。 また、ヒーティングプレートを使う場合は、プレートが非常に高温になること、そしてIHの安全機能が作動しやすいことを理解し、弱火から中火でじっくりと抽出することが重要です。
最後に、この記事のまとめポイントを箇条書きにしました。
- ビアレッティのアルミ製モデルはIHでは使えない
- IHの電磁誘導加熱とアルミの非磁性体が原因である
- IHヒーターは底面直径約12cm以下を検知しない場合が多い
- IH対応ビアレッティモデル「モカインダクション」や「ヴィーナス」は存在する
- 日本のIHと海外規格の違いにより、IH対応モデルでも使えないことがある
- IH非対応モデルには「ビアレッティ インダクションプレート」が解決策となる
- インダクションプレートはIH上に置き、その上にビアレッティを乗せて使う
- カセットコンロなど他の熱源を使うことも解決策の一つである
- モカインダクションは伝統デザインで直火・IH両用、ヴィーナスはスタイリッシュなステンレス製IH対応
- ブリッカインダクションはクレマが楽しめるIH対応モデルである
- IH対応モデルを選ぶ際はIHヒーターの底面サイズ対応範囲を確認すべき
- IH対応モデルのパッケージに「IH対応」マークがあるか確認が必要
- ヒーティングプレート使用後は高温になるため素手で触らない
- IHで使う際の火力は弱火〜中火が推奨される
- 小型モデルはIH非対応が多く、ヒーティングプレートでも反応しない場合がある